サクラメディア
桜, ソメイヨシノに代表される都市構造の中のパブリックメディア であり,バイオ技術を用いて複製された原初のバイオアートとも言 える.桜の表面が拡散スクリーンに見えたとき,それを光を用いた パブリックアートにしていこうと考えた. 2011 年の震災の年に発 電機とプロジェクターを組み合わせて桜の季節に夜な夜な行なって いた実験的作品,桜の花が光を拡散して,光る,時間性を持ったス クリーンはある季節のある期間にしか存在しない,本質的に収納性 の高い生素材の拡散材だ.花の拡散モデルと照射される光のモデル のオーバーラップがデジタルネイチャーを示唆している 花が咲くこと,都市の色が変わること,時間性と空間性の変化を様々な形で 我々は表現してきた。日本庭園にみられる桜や紅葉や苔や植栽生物を使い, 四季の変化と組み合わせ,動的な表現を,知覚よりも遥かに遅いフレームレー トの中に仕込んできた。 桜は映像でなく物質だしかし,それは三次元空間の中で,あたかも映像の ようにフレームレートを持ち、空間に舞い、そして消えてしまう. そんな植 物を都市にインストールしていくことは、まるでピクセルやスクリーンのよ うな,映像と物質の境界を行き来するような,そんな時空間的アート表現を 映像が生まれる前から我々は植物を用いて実現してきた. デジタルネイチャーへ向かう世界の中で,そのテクニウムが近代の超克とリンクして現れる。